【講座主旨】
抗体薬物複合体(ADC)の構成要素と,特にそこに含まれるリンカーの特性について触れた後,これまでに承認された医薬品ADCについて,歴史的な流れで効果的なADC構造について考える。また,ADC設計のための代表的な抗体修飾法の概要について説明し,天然抗体の特定の残基を狙った部位特異的修飾法について,特にFc親和性リガンドを用いた修飾法について詳しく説明する。そのような修飾法においては,連結用の反応性官能基を組み込んだFc親和性リガンドがIgGのFc領域に接触した際に生じる「近接効果」によって,標的とするFc領域のアミノ酸残基と修飾試薬の連結用反応性官能基との間の特異的かつ効率的な共有結合修飾が可能となる。さらに,このアプローチは大きく2つに分類される。すなわち,Fc親和性リガンドが生成物の抗体コンジュゲート上に残存する残存型コンジュゲート反応と,コンジュゲーション反応の過程でリガンドが遊離し残存しない非残存型(トレースレス)コンジュゲート反応である。これらの修飾手法について,具体的な反応例とともに紹介する。。
【講座内容】
1.抗体薬物複合体(ADC)の概要
2.承認されたADCに関して
3.リンカー技術に関して
・切断可能リンカー
・非切断可能リンカー
4.ADC結合のための技術
・ランダムカップリングによる修飾
・酵素を用いた糖鎖修飾法
・Fc親和性リガンドを用いたリガンド残存型修飾法
・Fc親和性リガンドを用いたリガンド非残存型修飾法
【質疑応答】
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◆講師プロフィール◆
専門分野:ペプチド科学,医薬品化学
学位:博士(薬学)
略歴・活動・著書など:
[略歴]
2010年-2011年 京都薬科大学 薬品化学分野 日本学術振興会 特別研究員(PD)
2010年-2011年 理化学研究所 客員研究員
2011年 (株)ペプチド研究所に入社
2018年から現職
[活動]
2018年 国際蛋白研セミナー Frontiers in Peptide Science 2018(大阪)(Co-Organizer)
2025年 10th Modern Solid Phase Peptide Synthesis
& Its Applications Symposium(福岡)(Co-Organizer)
日本ペプチド学会 評議員
病態プロテアーゼ学会 評議員
日本抗体学会若手の会 監事
[受賞]
奨励賞(日本ペプチド学会)
奨励賞(日本病態プロテアーゼ学会)
ポスター賞(日本ケミカルバイオロジー学会)
ポスター発表優秀賞(日本抗体学会)
生物工学論文賞(日本生物工学会)
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