【講座の趣旨】
自動車産業はいま,電気自動車EVや自動運転などにみるCASE(コネクティド,自動運転,シェアリング,電動化)革命と称される技術革新と,温暖化を含む地球規模の気候変動危機への対応を迫られている。CO2を大量排出してきた自動車産業にとって「100年に一度」といわれる技術革新を取り込みつつグローバル気候変動に対処することは,産業の浮沈を左右する決定的に重要な課題である。こうした状況下で,欧州では2019年にEU(欧州連合)が打ち出した新成長戦略「グリーン・ディール」が,自動車の「電動化」や循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を掲げるなど,産業社会の行方に大きなインパクトを与えつつある。
本講のねらいは,「脱炭素戦略」と位置づけられる欧州グリーン・ディールの概要ならびに同戦略の要となる産業政策の展開動向について解説するとともに,CBAMを含むEU諸政策が産業・企業にどのようなインパクトを与えているのかについて考察することにある。とくに後者については,自動車産業に関連する政策と主要メーカーの取組み=「脱炭素」対応を詳しく取上げ,その基本的な特徴を整理・解説する予定である。
1.EU産業政策の新展開
1.1 欧州連合(EU)の脱炭素戦略とそれにリンクする形で展開される産業政策について解説
1.2 グリーン・ディール産業計画:背景,概要,目標,経済効果など
1.3 自動車産業に関連する諸政策:CBAM,電池規則,LCA規制,Euro7(車両排出有害物質規制),CO2排出規制など
2.グローバル自動車産業の競争環境
2.1 ビジネスモデルの大転換:EVシフト,車のスマホ化(SDV化=ソフト定義車両化の進展),業界秩序の再編=異業種参入,サプライチェーン再編など
2.2 欧州メーカーの「脱炭素」対応:フォルクスワーゲン,ルノーなどの取組み
2.3 日系,その他(中国,米)の対応
3.EU「脱炭素戦略」のインパクト
3.1 壮大な社会実験(「脱炭素」=「循環経済」志向,ビジネスモデルの抜本的刷新を迫る)
3.2 EUモデルのグローバル・スタンダード化
3.3 他地域への連鎖的波及=CBAMのグローバル化(グローバル展開の可能性)
3.4 若干の展望と課題
【質疑応答】
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