【講座主旨】
肝胆膵外科では、肝機能低下による凝固能低下など特有の課題があり、肝移植では常に問題となるため、迅速かつ確実な止血材が不可欠です。単なる止血効果を超え、患者の凝固能に依存しない即応性、術中・術後の安全性、操作性・再現性の高い使用感を兼ね備えた止血材が求められています。今後の開発には、臨床現場に根差した課題設定と、術中ニーズのダイナミズムへの深い理解が不可欠であり、これこそが真のイノベーションの源泉となると思います。
【講演内容】
第1章:肝胆膵外科の止血における特殊性
・重度肝機能低下(肝硬変)患者の凝固能低下への対処
・膵液瘻・胆汁漏による術後遅発性の動脈性大出血のリスク
・外から止血する発想だけでいいのか?
・肝移植レシピエントとドナーそれぞれが抱える止血の問題
第2章:現場が求める止血材の特性
・患者の凝固能に依存しない確実な止血効果。
・安全性(異物反応・癒着回避)と簡便な操作性(出血点にピンポイントに)
・輸血回避(周囲臓器で抑える止血)と臓器間癒着防止(術後臓器再生・創傷治癒)の両立は可能か?
・こんなとき、こんな止血剤があったらいいな(手術映像からシーズを育てて!)
・ロボット手術時代に求められる止血剤の特徴とは?
第3章:止血材の現状と未来
・現状→物理的・凝固促進型など、出血様式に応じた使い分けが不可欠。
・未来→ナノファイバー やハイドロゲルなどの新素材に期待
・展望→ラボで血が止まれば完成ではない。開発には、多様な止血剤ニーズの場面を見て、現場のニーズを深く理解するためのに、臨床医との密接な連携が鍵。
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